開発の経緯

エムラクリームは、アストラ社(現アストラゼネカ社)により開発された、リドカインとプロピトカインの共融混合物を水中油(o/w)型クリームとして製剤化した外用局所麻酔剤である。

一般に皮膚の神経終末の多くは真皮に存在するため、麻酔効果を発揮するために皮膚表面に投与された局所麻酔薬は角質層を通過して真皮に到達する必要がある。角質層は、角質細胞が重層した構造をもち、吸水性に富んでいるが、角質細胞間には細胞間脂質があり水溶性物質のバリアとしての役割を果している。したがって、局所麻酔薬が角質層を通過して真皮に到達するためには、脂質層を通過できる疎水性の局所麻酔薬を高濃度に含み、水分含量の高い製剤が必要となる。

エムラクリーム及びエムラパッチの有効成分であるリドカインとプロピトカインは、いずれも室温では固体として存在するが、それぞれを等モル混合すると、室温で液状の共融混合物となる。この共融混合物を用いて製剤化することにより、水分含量が高く、油滴中に高濃度の局所麻酔薬を含む製剤の調製が可能となった。その結果、皮膚から吸収された有効成分(リドカイン及びプロピトカイン)は、速やかに油滴中から水中へ補われ、さらに水中から皮膚への透過性が高まり、十分な局所麻酔効果が得られるようになった。

エムラクリームは1984年にスウェーデンで承認されて以降、世界80ヶ国以上(2015年3月現在)で承認を取得し、外用局所麻酔剤として針穿刺、皮膚小手術時の疼痛緩和といった幅広い適応症に対して使用されている。

国内においては、佐藤製薬株式会社がアストラゼネカ社とライセンス契約を締結し開発に着手した。2012年1月に「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」を効能・効果として製造販売承認を取得し、同年5月より販売を開始した。2015年6月には「注射針・静脈留置針穿刺時の疼痛緩和」の効能・効果及び「小児用法・用量」が追加承認された。

エムラパッチは、エムラクリームの剤形追加製剤であり、リドカインとプロピトカインを各25r含有する共融混合物の乳剤1gを円形のセルロースシートにあらかじめ浸潤させた貼付型局所麻酔剤である。1993年にデンマークとスウェーデンでの承認取得以降、世界50ヶ国以上(2016年1月現在)で承認を取得している。

国内において、エムラパッチとエムラクリームの生物学的同等性試験が実施され、両剤の同等性が認められ、2017年3月にエムラクリームの剤形追加製剤としてエムラパッチが承認された。