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開発の意義・経緯

パッチテストは、アレルギー性接触皮膚炎の原因となるアレルゲンを確定する有力な手段である。その原理は、アレルゲンと推定される物質を患者の皮膚に貼付して、人工的にアレルギー性接触皮膚炎を再現させることにより、原因アレルゲンを特定する。

従来のパッチテスト(FC法※1)では、ワセリン基剤又は水溶液のアレルゲン試薬を1種類ずつ、その都度小皿(Finn Chamber等)に充填する操作が必要であり、用量が一定になり難いことなどが指摘されていた。また、一般的にワセリン基剤中のアレルゲンは不均一に分散しているため、汗に溶けると局所的に濃度が高くなり、刺激反応を起こす可能性があった。これら問題点の改善を目的として、1984年、スウェーデン・ウプサラ大学のFischerらはT.R.U.E. TEST®(Thin-layer Rapid Use Epicutaneous TEST:以下TT)のシステムを考案した1)。TTは親水性の基剤中に溶かしたアレルゲンをポリエステル支持体上に塗布して試験片とし、粘着テープに貼付したパッチテスト用診断ユニットである。スウェーデン・ファルマシア社(現ファイザー社)で開発され、1987年にスウェーデンで発売された。米国でも1994年から販売されており、現在ではSmart Practice社より世界各国で販売されている。現行のTTは1枚のパネルに12種類の試験片を含む、計3枚のパネルから構成されている。

パッチテストは、本邦と欧米で試験方法、用いられる標準アレルゲン(ICDRG標準アレルゲン※2)の種類、濃度及び判定基準が極めて類似しており、人種差による影響が少ないと考えられる。また、TTは欧米での臨床試験においてICDRG標準アレルゲンと同程度の診断性能及び安全性を有することが認められている。そこで本邦ではTTのうち本邦既承認の6種類のアレルゲンをそれぞれ単一で含むパッチテストテープを佐藤製薬株式会社が開発し、本邦の臨床試験結果と欧米での非臨床試験及び臨床試験結果をもって承認申請を行い、2009年2月に承認を取得、2010年4月より販売を開始した。

一方、ジャパニーズスタンダードアレルゲン※325種類に関して、国内で購入できる濃度及び基剤が合致しているアレルゲンは4種類のみで、残りの標準アレルゲンは医師が個別に海外より輸入している状況にあった。日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会の会員を対象としたアンケート調査の結果2)からも、TTのようなReady-to-useのパッチテストアレルゲン製品が国内で販売されることは、臨床現場の医師やアレルギー性皮膚疾患患者にとって有益であると考えられた。この背景を踏まえ、佐藤製薬株式会社ではTTの各アレルゲンのうち、本邦標準アレルゲンに対応する21種類のアレルゲンを2枚のパネルに配置したパッチテストパネル®(S)の開発に着手し、国内外の臨床試験成績に基づき、製造販売承認申請を行い、2014年12月に「アレルギー性皮膚疾患のアレルゲンの確認」を効能・効果として製造販売承認を取得した。

※1
FC法:Finn chamber法。従来のパッチテストの中で一般的で、かつ信頼性の高い診断方法。
※2
ICDRG標準アレルゲン:国際接触皮膚炎研究班(ICDRG:International Contact Dermatitis Research Group)選定の国際標準アレルゲン(全32種)
※3
ジャパニーズスタンダードアレルゲン:日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会(JSDACD)が選定した日本人で陽性率が高い原因物質25種類
1)
T. Fischer, et al.: The thin layer rapid use epicutaneous test (TRUE-test) , a new patch test method with high accuracy. British Journal of Dermatology, 112: 63-68, 1985.
2)
鈴木加余子、松永佳世子:パッチテストアレルゲンに関するアンケート2010、Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology, 5 (2) : 91-102, 2011.